HSCと自閉症って誤解されやすいの?似ているところ・違いを分かりやすく解説!

「うちの子は自閉症のグレーだと言われているのですが、もしかしたらHSCという可能性はないでしょうか?」

HSCの専門医に非常によく寄せられる質問だといいます。自閉症とHSCの見極めについて悩んでいる親御さんが多くいらっしゃるのですね。

この記事では、様々な専門家の意見を取り入れながら、HSCと自閉症の関係について分かりやすく解説していきます。

HSCと自閉症の違い、似ているところ、見極めについて理解が深まると思います。

  • HSCと自閉症の似ているところ・違うところ
  • HSCと自閉症の両方をあわせ持つ可能性もあるの?
  • HSCと自閉症の判断を間違うとどんなリスクがあるか
  • HSCと自閉症どちらなのかを見極めるにはどうしたらよいの?

※現在では「自閉スペクトラム症」と表現するのがスタンダートですが、この記事では「自閉症」と表現しています。

目次

HSCと自閉症の似ているところ・違うところ

まずはじめに、HSCと自閉症の似ているところ・違いについて。様々な専門家の意見をまとめてみるとこのようになります。

似ているところ

HSCと自閉症は以下のような部分が似ていると言われています。

◆感覚的な刺激に極めて敏感
HSCも自閉症も、感覚的な刺激に対して、極めて敏感なところがあります。音や、肌に触れるもの、目にしたものや、におい、味、その他いろいろな感覚面で、とても敏感です。

◆感情をコントロールするのが難しいときがある
感情的な面でも、HSCと自閉症の子どもたちには似ている部分があります。HSCは、他の子よりも激しい感情を見せたり、急にかんしゃくを起こしたりすることがあります。同じく自閉症の子どもたちも、感情をコントロールすることが苦手です。

違うところ

一方で、HSCと自閉症は以下のような部分に違いがあると言われています。

◆相手の気持ちが分かるかどうか
HSCは、場の空気を読んだり人の気持ちを汲んだりする能力が長けていますが、自閉症の場合はこれが苦手な傾向があります。例えば太っている人に向かって「なんであなたは太っているのですか?」と聞いてしまうなど、人の気持ちを汲むのが難しいといったことがあります。

◆感情のコントロールが出来ないのは一時的かどうか
HSCが感情のコントロールが出来なくなってしまうのは、刺激過多になった時だけです。自閉症の場合は、常に感じた刺激を適切に処理できない状態なので、感情のコントロールが難しい状態が続きます。

参考:専門家の意見

HSCの専門家が、HSCと自閉症の違いについて述べている部分を集めました。

例えば、自閉症スペクトラムの場合は、感覚処理の過剰な負担に反応することもありますが、反応しないこともあります。自閉症の場合は、注意を向けるべきものと排除していいものとを見極めるのが難しいようです。ですから、人と話すときに、相手の顔よりも靴に気をとられてしまうことがあるのです。それに対して、HSPは顔をはじめとする社会的な手がかりに注意を払います。全ての情報を排除できずに受け止めたら、当然、子どもは過剰な刺激に圧倒されてしまうでしょう。自閉症スペクトラムの人は、自分が執着していることに対しては、ささいなことに気付いたりします。でも、社会生活では(人づきあいをしていく中では)、関係ないことのほうに注意を払いがちです。

『ひといちばい敏感な子』 エレイン・N・アーロン 1万年堂出版 p429

HSCの感覚の敏感さをもって、発達障がい(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群など)と誤解されることがあります。
自閉スペクトラム症でも、感覚的な刺激に極めて敏感なところがあるからです。
しかし、アーロンさんは、HSCと、自閉スペクトラム症は、違うと言っています。
自閉スペクトラム症は、人の気持ちに関しては、気付きにくい、空気を読むのが苦手、ということがありますが、HSCは、むしろ、人の気持ちを察することに、ひといちばいたけているからです。
『HSCの子育てハッピーアドバイス』 明橋大二/著 1万年堂出版 p60

自閉スペクトラム症の場合は、社会的なものごとに対する理解の鈍さがあります。一方、HSCやHSPは社会的な理解がとんでもなくいい。共感力が高いのです。そこが決定的に違います。
『子どもの敏感さに困ったら読む本』 長沼睦雄/著 誠文堂新光舎 p58

HSCの持つ繊細さが自閉スペクトラム症の感覚過敏と混同され、ときには誤診されることもあります。
ある患者さんはたいへん敏感な方で、私は「あなたはHSPで解離を起こしているね」といつも言っているのですが、統合失調症だと診断されているそうです。繊細すぎてすぐに疲れ果ててしまうので、普通の人と同じように働くことができないのですが、共感性が高く、十分な社会性を持っています。
HSCが自閉スペクトラム症だ、多動だ、統合失調症だと考えられてしまうのも、幻覚や不注意といった解離の症状やさまざまな感覚の過敏さを取り上げてしまうところにあると思います。

『子どもの敏感さに困ったら読む本』 長沼睦雄/著 誠文堂新光舎 p59

最近の研究でも、自閉症とHSCでは、脳のミラーニューロン(共感性をつかさどる部分)の反応が違うといわれています。
ただ、これはまだ研究が始まったばかりです。

『何かほかの子と違う?HSCの育て方Q&A』 明橋大二/著 1万年堂出版 p132

HSCと自閉症の両方をあわせもつ可能性もあるの?

さてそれでは、HSCと自閉症の両方をあわせもつ可能性はあるのでしょうか?これはHSCの専門家の中でも見解が分かれているようです。

◆アーロン博士は、「HSCと自閉症の合併はない」とお考えです。

HSCと混同される理由は、自閉症やアスペルガーの子どもたちは、感覚的な刺激に極めて敏感な点です。でも、場の空気や相手の気持ちには敏感とはいえません。これがHSCと大きく異なるところです。
HSCは、「自閉スペクトラム症」のうち、程度の軽い方に属するのではないかという議論もありますが、私は違うと思います。
『ひといちばい敏感な子』 エレイン・N・アーロン 1万年堂出版 p66

◆明橋大二先生も、「HSCと自閉症の合併はない」とお考えです。
2019/6/2に行われたトークイベントの中で、HSCと発達障害の合併について以下のようにおっしゃっていました。

・HSC+ADHD  →可能性あり
・HSC+LD   →可能性あり
・HSC+自閉症 →可能性なし

◆長沼睦雄先生は、HSCと自閉スペクトラム症の合併の可能性はあるとお考えです。

私は、自閉スペクトラム症(ASD)の感覚過敏とHSCの敏感さとはまったく関係ないと言っているわけではありません。そこには、重なる部分もあります。

たとえば、先日お母さんに連れられて初めて私のところに診療に来た子は、自閉スペクトラム症と診断されていました。
お母さんはこう言われました。
「先生、この子に障がいがあることはわかっています。それはそれとして、感覚の敏感さに本人がとても苦しんでいるようなので、この敏感さにどう対応したらいいかを教えていただきたいのです」
その子はたしかに、五感にいろいろな敏感さを持っていました。しかし注意すべきは、五感意外の敏感さも持っているという事でした。通常、ASDの場合は人とのコミュニケーションが苦手で、マイペースで人にあまり感心を示さないのですが、その子は周囲にとても気遣いを見せるのです。
私は言いました。
「ASDであり、HSCですね。」
明らかにASDの感覚過敏とは違う敏感さが見られたのです。

『子どもの敏感さに困ったら読む本 長沼睦雄/著 誠文堂新光舎 p62、63

HSCと自閉症の判断を間違うとどんなリスクがあるか

「本当は自閉症なのにHSCだと思い込んでいた場合、必要な支援が遅れるのではないか?」

という不安をもつ親御さんも多いようですが、HSCと自閉症の判断を間違った場合、どんなリスクがあるのでしょうか?

明橋先生は、この疑問について著書の中で以下のように回答しています。

発達障がいなのに、HSCと誤解したらどうなのか、ということだと思いますが、私は、それはそれほど問題がないと思っています。
なぜなら、HSCにとって必要な支援と、発達障がいに必要な支援は、それほど違いはないと思っているからです。

~中略~

もちろん、重度の自閉症の場合は、専門の療育、というものがありますが、そこまでの場合はおそらく誤解されることはないと思います。
私の経験では、むしろ、医師から「発達障がいのグレー」と言われていたのが、実はHSCだった、というほうが圧倒的に多いです。

『何かほかの子と違う?HSCの育て方Q&A』 明橋大二/著 1万年堂出版 p172、173

HSCと発達障がいに必要な支援は、基本的にそれほど違いはないので、判断が違ったからと言って、それほど大きな問題ではないとおっしゃっています。

また、重度の自閉症の場合は早期療育が重要だと言われていますが、その場合は適切に診断されるだろうということです。

HSCと自閉症どちらなのかを見極めるにはどうしたらよいの?

結局、見極めるにはどうしたらいいの?というのが気になりますね。

HSCの専門医に相談

HSCを知っている専門医に相談できれば一番良いですが、私の知る限りでは、現在日本にはHSCに精通した医師はこちらのお2人しかいらっしゃいません。お近くの方はぜひ受診を検討してみてください。

明橋大二先生
【真生会富山病院 心療内科】
https://www.shinseikai.jp/department/shinryounaika/
病院は富山にあります。現在、明橋先生の診察は予約が取りづらいようですが、電話で問い合わせしてみると状況を教えてくれます。

長沼睦雄先生
【十勝むつみのクリニック】
http://mutsumino.info/
クリニックは北海道にあります。オンライン診療も始まったようです。ぜひ問合せしてみてください。

決めつけずに子どもの様子をみて柔軟に対応

とはいえ、お2人の診察を受けることが出来ない方も多いと思います。

その場合は、安易にHSCだ、自閉症だ、と決めつけずに子どもの様子をみながら柔軟に対応していくしかないと考えています。表面に出ている困りごとだけでなく、もっと根本に課題が見つかるかもしれません。

「自閉症という診断を受けたけれど、やっぱり違和感がある」
「療育を受けているけど状況が良くならない」
「HSCだと思っているけれど、発達障がいの可能性についても気になる」

という親としての感覚を大切にしてください。

①自閉症だと診断されている場合はセカンドオピニオンを
「自閉症だと診断されているけれど違和感がある」という場合は、セカンドオピニオンを活用してみましょう。

発達障がいについては様々な研究がなされ、検査方法や療育方法は日々進化しています。しかし、その全てを担当医師が把握しているとは限りません。また、医師によって診断や療育に対する考え方も違います。

やっぱり医師の診断に違和感がある、他の意見もきいてみたいという場合は、別の医師の意見を聴いて、自分の子や家族にあった医師を選ぶことも大切です。

②HSCだと自己判断している場合は発達の専門機関に相談
逆に「HSCと自己判断しているけれど、発達障がいの可能性についても気になる」という場合は、一度専門機関に相談してみると良いかもしれません。

我が家の場合は、市の発達相談で臨床心理士さんにみてもらい「発達障がいの可能性は少ない」という見解をもらって納得できました。

いきなり医療機関を受診するのはハードルが高いかもしれないので、お住まいの地域の発達相談窓口に問合せをしてみるのがおすすめです。

まとめ

以上、HSCと自閉症についてまとめてみました。
HSCなのか自閉症なのか、という見極めについては非常に気になるところですが、どちらであっても適切な関わり方は基本的に同じだということが分かっていれば安心できそうです。

表面的に見えている困りごとだけを見て、HSCだ、自閉症だ、と決めつけず、子どもの様子を丁寧に観察して、柔軟に対応していきたいですね。

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