「私も同じかもしれない・・」
子どものHSCについて調べているうちに、親である自分にも当てはまる部分が多いことに気付きませんか?
わたしがHSCの親御さんから相談を受けるなかでは、約8~9割が親御さんも同じ気質をもっています。
大人の場合は、HSP(Highly Sensitive Person)ハイリ―センシティブパーソンといいます。
「自分がHSPだから子どもに遺伝したの?」
「HSPの親が育てると、HSCの気質を強くしてしまわないだろうか?」
この記事では、HSCと遺伝の関係について分かりやすくお伝えします。様々な専門家の見解を読み解いてまとめているので、理解が深まると思います。
目次
HSCって遺伝するの?
まず、HSCは遺伝なのか?という点について。
HSCの遺伝については、アーロン博士と長沼医師がそれぞれ著書で言及しています。見てみると、敏感な性質は「主に遺伝子で決まる」ということは共通しています。
ただし、この遺伝子が環境で変化するかどうかという点については考えが少し違っているようです。
順番にご紹介しますね。
遺伝子で決まる
アーロン博士は、遺伝子は環境で変化するという考え方もあるが、敏感な性質は主に遺伝子で決まると述べています。
近年のエピジェネティクス、つまり遺伝子は環境で変化するという考えからは、敏感な性質には、遺伝子以外にも要因があると考えることもできそうです。
しかし、私は、研究によって見えてきた「敏感性の進化的な理由」という観点から、人一倍敏感であるという性質は「主に」遺伝子で決まると考えています。『ひといちばい敏感な子』 エレイン・N・アーロン 1万年堂出版 p436
環境次第で変わる
しかし、HSPではない親からHSCが生まれることもあるし、親子共にHSPであっても、敏感さのあらわれ方が全く違ったりすることもあります。
これについて長沼医師は、同じ遺伝子を持っていても環境次第で発現の仕方が変わると述べています。
このような後天的な遺伝子の発現を調整している仕組み、遺伝子のスイッチをオンにしたりオフにしたりする仕組みや学問のことを「エピジェネティクス」といいます。
これに基づけば、健康によい遺伝子を持っていても、そのスイッチがオンにならなければ健康にはならない、また、深刻な病気を招くような悪い遺伝子を持っていたとしても、そのスイッチがオンにならなければ病気にならない、すなわち病気を心配するには及ばないということになります。
つまり、スイッチのオン、オフの決め手となるのが環境であるということ。同じ遺伝子を持っていても、環境次第で発現の仕方が変わる。さらにいうと、同じ環境でも刺激の受けとめ方で、遺伝子発現の仕方が変わってくるということです。
『子どもの敏感さに困ったら読む本』 長沼睦雄/著 誠文堂新光舎 p126
敏感な性質を引き起こす遺伝子とは?
では一体、HSCという敏感な性質を引き起こす遺伝子とはどのようなものなのでしょうか?
アーロン博士のサイト(http://hsperson.com/faq/when-i-look-for-studies-i-hardly-see-any/)によると、敏感な性質を引き起こすのには、特定の遺伝子変異が関連していることが分かっているようです。セロトニントランスポーターという遺伝子です。
セロトニントランスポーター
セロトニントランスポーター遺伝子とは、神経伝達物質であるセロトニンの伝達に関係する遺伝情報が書き込まれた遺伝子である。染色体番号17に存在する。組み合わせはSS型、SL型、LL型がある。
(Wikipediaより)
セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれていて、最近ではメディアで取り上げられることも増えていますね。
セロトニントランスポーターには、この「幸せホルモン」の伝達に関する情報が組み込まれています。3つの配列があって、配列の組み合わせによって違った性質があらわれます。
- SS型:ストレスや不安を感じやすい。成育環境の影響を受けやすい
- SL型:中間
- LL型:ストレスや不安を感じにくい。成育環境の影響を受けにくい
※Sはshort(短い)、Lはlong(長い)を表しています
HSCは成育環境の影響を受けやすい遺伝子をもっている
アーロン博士のサイトでは明言されていませんが、配列の特徴からすると「HSCはSS型の配列をもっている」と考えることができるでしょう。
つまり、HSCは、ストレスや不安を感じやすい。成育環境の影響を受けやすい遺伝子をもって生まれてきたということです。
日本のHSCは5人に1人よりも多いかもしれない
さらに興味深いことに、セロトニントランスポーターの配列は人種によって大きな違いがあるということが分かっています。
●S遺伝子だけもつSSタイプ
日本 68.2%
アメリカ 18.8%●S遺伝子とL遺伝子をもつSLタイプ
日本 30.1%
アメリカ 48.9%●L遺伝子だけをもつLLタイプ
日本 1.7%
アメリカ 32.3%出典:クラウス-ピーター・レッシュ「サイエンス」1996 中村敏昭「アメリカン・ジャーナル・オブ・メディカル・ジェネディスク」1997
アメリカではL(長い)遺伝子をもつ人が8割を占めるのに対して、日本では3割にとどまります。日本人は、L(長い)遺伝子をもつ割合が世界で一番低いと言われています。
子どもの5人に1人はHSCだと言われていますが、もしかしたら日本ではもっと高い割合なのかもしれませんね。
HSCは良い影響も受けやすい
「ストレスや不安を感じやすい。成育環境の影響を受けやすい」と言われるとドキッとしてしまいますが、心配はいりません。
さまざまな調査で、不幸な子ども時代を送ったHSPは、同じく不幸な子ども時代を送った非HSPに比べ、落ち込み、不安、内向的になりやすい傾向がありました。でも、じゅうぶんによい子ども時代を送ったHSCはそうでない子よりも、よい子育てや指導から多くのものを得ることができるということです。
『ひといちばい敏感な子』 エレイン・N・アーロン 1万年堂出版 p433
HSCは気持ちを汲んでもらえない環境で育つと、他の人よりも不安やうつになりやすいという研究結果が出ていますが、逆に自分の気持ちを汲んでもらえるような愛情に満ちた関わりを受けると、とびぬけた才能を発揮します。
まとめ
HSCの遺伝についてお伝えしてきました。
まとめると、
・敏感な性質は「主に遺伝子で決まる」
・HSCは成育環境の影響を受けやすい遺伝子をもっている
・日本のHSCは5人に1人よりも多いかもしれない
・HSCは良い影響も受けやすい
という事が分かりました。
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