HSCは「ひといちばい敏感な子」と訳されていますが、
・HSCの敏感さってどういうこと?
・HSCの敏感さは発達障害の敏感さと何が違うの?
という疑問をお持ちではありませんか。
そこでこの記事では、HSCの敏感さについて分かりやすく紹介します。
具体的には、
- HSCの敏感さには4つの特徴がある
- 何に対して敏感かは子どもによって違う
- HSCの敏感さは集団の中で見えやすい
- HSCの敏感さと発達障害の敏感さとの違い
について、HSCの書籍やHSCに精通した医師の言葉を交えながらご紹介します。
HSCの敏感さがどういうものなのか、理解が深まるのではないかと思います。
目次
HSCの敏感さには4つの特徴がある
HSCは日本語で「ひといちばい敏感な子」と訳されていますが、HSCの敏感さというのは一体どういうものなのでしょうか?
HSCの敏感さには、大きく4つの特徴があります。
①深く考える
②過剰に刺激を受けやすい
③感情反応が大きく、特に共感力が高い
④些細な刺激を察知するということ
以上の4つについて具体例と共に解説していきます。
①深く考える
敏感と聞くと、聴力や嗅覚などが人より発達しているというイメージがありますが、HSCの場合、必ずしも視力や聴力、嗅覚、味覚が人より発達しているわけではありません。
脳が、受け取った情報を深く処理しているところに特徴があると言われています。
例えば、レストランで音楽が流れていたとします。耳から聞こえる音の大きさは他の人と同じですが、HSCの子どもは聞こえてきた音について深く考えています。
「この音楽は悲しそう」「なんの楽器だろう」
「どこから聞こえてくるんだろう」「あの時聞いた音と同じだ」といった具合です。
普通の人なら聞き流してしまうようなBGMひとつとっても、深く考えているのです。
②過剰に刺激を受けやすい
HSCに精通する長沼睦雄医師は、HSCがたくさん刺激を受けてしまう様子を、魚をとる地引網に例えています。
網の目が大きければ、小さな魚はすり抜けてしまいます。しかし、HSCは網目が非常に細かいのです。小さな魚ばかりか、必要のないものまでいろいろ拾ってしまうため、網がとても重くなってしまう。引き揚げるのにも疲れます。
具体的には、先生が他の子を叱っている様子を見ると、自分が怒られて、責められているようで怖い。といったもの。
これはHSCの子の間ではよく聞く事例です。
③感情反応が大きく、特に共感力が高い
HSCは、ものごとに対してだけでなく感情にも敏感で、特に共感力が高いと言われています。
HSCの娘は、あるとき急に「髪の毛をばっさり切りたい」と言い出しました。ずっと長い髪にあこがれていて、絶対に切らせてくれなかったのに。一体どうしたんだろうと不思議に思っていました。
切ってからしばらくすると、娘は
「本当は長い髪が良かったけど、短く切ったんだ。ママは、私の髪が長いと洗うの面倒くさいし、乾かすのも面倒くさいし、結ぶのも大変だもんね。」
と言ったのです。
確かに毎日面倒くさいなぁとは思っていたのですが、口に出したことはありませんでした。娘はきっと、私の表情やしぐさを見て、私の感情を感じ取っていたんですね。まさにHSCの共感力の高さを感じた出来事でした。
駅のホームでおばあちゃんが杖をついて歩いているのを見て
「あのおばあちゃん、腰が痛いのかな?かわいそうだね。きっと痛いよね。」
と言ったこともありました。
このように、初めて会った人でも辛い気持ちによく気付いたり、時には動物の気持ちにも共感することもあると言われています。
④些細な刺激を察知するということ
普通の人なら気付かないようなこと、大したことないと見過ごしてしまうようなことが、HSCはとても気になってしまいます。
中には感覚器が特に発達している子もいますが、大半は、感覚器の反応が大きいのではなく、思考や感情のレベルが高いためだと言われています。
例えば、
・ダイニングテーブルの子ども椅子の位置を少し変えただけでも、帰宅直後に「変えたでしょ」と気付く
・小さなため息をついただけなのに「ママ怒ってるでしょ」と気付かれる
・「まちがいさがし」がはやくて正確
など。
以上の4つを全て合わせもっているのがHSCです。
こんな場合はHSCではないでしょう
逆に、敏感であってもこんな場合はHSCではないと言われています。アーロン博士の著書よりご紹介します。
子どもが、たった一つのことや、その年齢にありがちなことだけに敏感な場合は、おそらくHSCではありません。
例えば、大半の子どもは、生後半年から1歳ぐらいまでは人見知りをし、2歳頃には物事のやり方にこだわるようになります。小さい子は大抵大きな音や両親と離れることを嫌がりますし、ほとんどの子が怖い夢を見ます。
また、例えば弟や妹ができた、引っ越しをした、両親の離婚、シッターの交代など、大きなストレスや生活環境の変化の後に敏感になったり、怖がりになったりする場合も、HSCではないと考えていいでしょう。『ひといちばい敏感な子』エレイン・N・アーロン より引用
何に対して敏感かは子どもによって違う
HSCは敏感な子ですが、何に対して敏感かは子どもによってそれぞれ違います。
例えば、このように。
・天候や植物の様子など、自然環境の微妙な変化を察知する子
・光や音に対して敏感な子
・においや味に敏感な子
・服の感触や素材に敏感な子
・免疫システムが敏感な子(アトピーや喘息などのアレルギー反応)
・動物とのコミュニケーションが得意な子
・ユーモアのセンスがある子、皮肉が得意な子
敏感さの種類が違っても、その根底には共通して「敏感である」ということがあります。
HSCの敏感さは集団の中で見えやすい
うちの子は「少しだけ敏感」だから、HSCじゃない?・・という場合は、どのように見極めればよいのでしょうか。
アーロン博士の研究によると、子どもが「少しだけ敏感」というパターンは少なく、ほとんどが「人一倍敏感である」と「全く敏感でない」のどちらかに寄っているという結果が出ています。
なので、自分の子が敏感かどうかを見極めるには、子どもの集団の中で観察するのが一つの方法になります。近所のお友達の中、園のクラスの中で比較してみた時に、刺激に対して反応する度合いが高いか?ということです。
自分の子ども1人だけを見ている時は気付かなかったけれど、集団の中で子どもの様子を見て、初めて「あれ?何かちがう?」と気付いたパターンは多いです。決して、周りの子と比べることを勧めているわけではないのですが、親の「あれ?」という違和感を1つの目安としてとらえると良いでしょう。
娘の場合も、顔なじみのご近所家族でクリスマス会をやっても部屋の前で固まって最後まで入れなかったり、保育園に通うようになって強烈で長期にわたる登園しぶりがあったりしたことが、HSCだと気付くきっかけとなりました。
HSCの敏感さと発達障害の敏感さとの違い
子どもに敏感さがあることが分かっても、その敏感さはHSCなのか発達障害なのかは、簡単には分からないですよね。
特に自閉スペクトラム症の特徴にも敏感さがあるため、誤解されることがよくあると聞きます。しかし、自閉スペクトラム症の敏感さとHSCの敏感さとは全く別物だと言われています。どうやって見極めればよいのでしょうか。
決定的に違うのが、自閉スペクトラム症の場合は社会的なものごとに対する理解に鈍感さがあるが、HSCの場合は社会的なものごとに対する理解がとてもあるという点です。
他にも違いがいくつかありますので、以下にまとめました。
・社会的な物事に対する理解の鈍感さがある(空気を読むのが苦手、人の気持ちが分からないなど)
・共感性が低い
・五感や身体感覚など、科学的に証明できる敏感さのみ
・社会的な物事に対する理解がとても良い(場の空気や人の気持ちを読む力にたけている)
・共感性が高い
・見えないものに対する感受性、共感性なども含む
※こんな場合は、自閉スペクトラム症の可能性もあります。
五感に関する敏感さがずっと続き、興味や関心の狭さ、切り替えの苦手さ、きりもなく繰り返す行為などがみられる場合は、ただの敏感気質というより自閉スペクトラム症であるケースが多いです。
『子どもの敏感さに困ったら読む本』長沼 睦雄 より引用
※医療チームに相談が必要な場合もあります。
ひきこもる、食事をしたがらない、強迫観念がある、しょっしゅうけんかをしかける、否定的な自己イメージを持つ、絶望的になるなど、心配な変化が前触れもなく怒り、それが続くときには、チームで治療を行っている専門家たちの助けを借りる必要があります。
少なくとも児童心理学者と児童精神科医、小児科医のそろったチームに相談しましょう。HSCの反応は生まれた時からほぼ一貫していて、突然変化するものではありませんし、悲観的になるばかりでもありません。
HSCは、そうでない子と比べて目立った反応をしますが、それは彼らにとって正常範囲のものであり、その他の行動についても平均的です。歩き出したり、話し始めたりする時期は他の子と変わりません。ただ、トイレトレーニングやおしゃぶりの卒業は、少し遅れる傾向が見られます。
『ひといちばい敏感な子』エレイン・N・アーロン より引用
まとめ
HSCの敏感さについてお伝えしてきました。一言で敏感と言っても、実はかなり奥が深いですね。
なお、正確な診断を行うには専門家や医師への相談が必要です。あくまで、親御さんがHSCの敏感さについて理解を深めるための材料としてご覧いただけますと幸いです。
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